第一章
一瞬、目が合ったような気がしたと同時に何故かぎくりとした。何か冷たいものが首筋を流れるような感覚に思わず手を触れて。その時、誰かに笑われたような。
……我ながら酷い被害妄想だと思う。
「正義というものは非常に脆く崩れやすい。この世界で最も硬い物質であるダイヤモンドが同じダイヤモンド相手であれば形を変えてしまうように、異なる正義でもぶつかり合えば簡単に意志の糸が解けてしまう」
ルーティは何処となく腑に落ちない様子で少年を見上げた。
「正義とは。敵対するべく悪に最も染まりやすい種族なのです」
会場がざわついた。
「……そこで我々第四正義部隊です」
少年はにこりと笑う。
「緩んだ意志の糸をきつく締め直すのではなく」
間を空けずにはっきりと、
「断ち切る」
反対に、今度はしんと静まり返った。
「正義が正義を濁すのであれば、いっそのこと終わらせてしまえばいい」
ひと呼吸おいて。
「……人殺しを推奨する団体ではなく。起こりうる可能性の因子を絶つのが目的であることをご理解いただければ幸いです」
少年は笑いかける。
「我がレイアーゼ国の為に尽くす。目的は他の部隊と何ら変わりないのですから」