第二章-後編-
ルーティが飛び出すと同時ロックマンはふっと視線を上げた。青く澄んだガラス玉のような無機質な瞳に捉えられて。
その刹那――全身に電撃のようなものが走り悪寒を覚えた。思わず足が竦みそうになるそれの正体は紛れもなく殺気そのもので。大乱闘というバーチャル世界におけるゲームの中で露わにするべきではないが当然本心とは異なるのだろう。
「くっ」
地面を蹴り出し、跳躍。前方に回転をかけた踵落としで先制を仕掛けるが冷静に見切られ交差した腕に防がれた。大体。上からの奇襲なんてものは下で防御体勢である者の方が圧倒的に不利であるはずなのに今現在同じ状況であるロックマンはどうして表情一つ変えずに受け止めて此方を見上げているのか。
ロボットだからという理由だってそれが何にでも通用するという話でもない。
弱きを助け、強きを挫く。正義の意志を小さなその胸に宿しそれを糧に動力源に自身の能力を高めているのだとしたら。
――負けるわけには。
「ルーティ!」
はっと目を開くとそこには右腕ひとつで踵落としを受け止めながら左腕の砲口を向けるロックマンの姿があった。
砲口の奥で青い光が疼く。その時ようやく硬直が解けてルーティは腕を蹴り出し退避を図ろうとした。
「っ、!」
……けれどそれより早く。
「しまっ」
足首を掴まれて――