第一章
……正義、か。
そういえば『X部隊』にはこれといったコンセプトが無い気がする。というのも、誰も自由に活動しているので多少ぶつかり合うことはあれど、それがいつの間にか自然と混ざり合い結果として強い絆を結んでいるのだ。
「……今現在世間に広く知れ渡っている正義といえば敵対する悪を討つ矛となり、人々を守る盾となるものがほとんどでしょう」
カチッという音に振り向くとウルフが咥えた煙草にライターで火を付けようとしているところだった。
「しかしながら近年では悪も異なる正義の一環であるとして」
慌てて、ライターを取り上げる。
「認めるといった形で、見逃す例も少なくありません」
睨まれるより先に「だめっ」と小声で言いつけた。
演説中に何を考えてるんだこの人は……
「無意味な争いごとを避ける。人を守るのが正義ならそれも正しい在り方です」
ルーティはライターをテーブルの上に置いた。
「彼らを批判するつもりはありません。今や様々な形を持つ正義に決まったルールなど存在しないのだから悠々自適に自らの使命を全うすればいい」
きっと睨み返して。
「……ただし」
ふと。
「それが本当に我がレイアーゼ国の為となるのであれば」
演説中の少年を見遣る。