第二章-後編-
ウルフは眉をひそめる。
「確かに、このシステムの中では誰も怪我をしないし死ぬこともない。でもだからって戦いの中で誰も何も感じないってことはないんだ」
真剣な眼差しとはまた違う。
まるで子供のように目を輝かせながら。
「痛覚や感情。それって誰かが特別なんじゃなくて皆同じことなんだよ!」
何かに固執している以上、見えないものがある。
それは他の誰でもない自分自身――
「その通り」
リオンは満足げに笑み。
「人は危機的状況に陥ると気持ちが焦り、相手は疎か自分自身のことも分からなくなってしまう。我々の能力というのは常に有利な立場にあるものではなく、その一点しか見えていない者にまさしくそれにしか注意が向かないよう言葉の術を使って惑わす、そんなものなのだよ」
ルーティはにやりと笑った。
「そこまでネタをばらしちゃうってことは負ける気ゼロだね?」
「当たり前だ。そもそも初めから負けるつもりなんかない」
「それは僕たちも同じ」
ルーティが視線を遣るとウルフはふんと鼻を鳴らして。
「……いくよ、ウルフ!」
「っは、遅れんなよ!」