第二章-後編-
体を大きく仰け反り、振りかぶった両腕は後ろに向かって半円を描く。足を踏み込むのと同時今度は体を前に倒しつつ両手を突き出し、手のひらから波導エネルギーを放出させる――見て回避するのはあまりにも無謀すぎる。だからといって先読みできるような簡単な動きでもない。
独学か、奴の動きときたら何かスポーツを基盤にしたような動きでもなくはっきり言ってでたらめだ。拳法に近く感じるものはあるが完全にそれといった話でもない――ウルフは顔を顰めて後ろに飛び退くと咳き込んだ。
こっちの体力も疲労度から見て余裕がない。あの波導の攻撃力とリーチから察するに奴も余裕がないはずだが――それ故の余裕というやつかまるで隙が見られない。
奴は他人の心の中を読み取る能力者。あれやこれやと思考を巡らせたところで不利なこの状況下では余計に目を凝らすまでもなく――
「お見通し」
……ほらな。
「ひとつ助言しておく」
リオンは構えを解かないまま。
「この眼は確かに人の心が覗けるが、全て思うがままという話でもない」
ウルフは切れた口端を手の甲で拭って。
「貴殿だって見られたくないものには蓋をするし嘘偽りで注意を逸らすだろう? 最も厄介なのは後者でその行為に至ってはなかなか真実に辿り着けない……」
リオンはにこりと。
「制御(これ)を外せば別だが」