第一章
ルーティはざっと会場を見渡した。
……思っていた通りだ。制服が黒いのは自分とウルフの二人だけ、刺繍などの色は違えど基調は白。色だけで判別がつくようにしたのだろう。最も差別ではなく特別であるといった意味でそうしたのだろうがまるで盤面負けした気分。
迷惑な話だと思ったのも束の間。
「司令官」
マイクを通して若い男の声が聞こえた。
「差し支えなければ演説を改めさせて頂いても宜しいでしょうか」
ルーティは顔を上げる。
「……何せ彼らは国の誇るトップ部隊」
男は笑った。
「是非ともこちら側の方針に耳を傾けていただきたい」
まるで強風に煽られたかのように髪は向かって左側へ払うように、しかもそれが癖なのか寝ぼけた風ではなくしっくりとくる。ガラス玉みたく無機質な瞳は澄んだ海の色を映し出して。ルーティは思わず見惚れた。
白を基調にした制服に身を包んだ。年齢はまだ十五、六といった辺りか……
「……どうかな」
びくっと思わず肩を跳ねた。
どうやら自分に言っているようなのだ。
「お、お願いします」
マイクを持った男改め少年はにこりと笑った。