第二章-後編-
心を読まれている――
ルーティは静かに拳を握った。実際、試合は既に始まっているのだがそれを知りながら双方共に構えを取らなかったのである。これだけがら空きならウルフが攻撃を仕掛けそうなものだが、そうしないということは聞いておけというお咎めだろう。
「ルーティ殿」
続けて口を開くリオンに。
「戦場において安全な場所などない。そうだろう?」
ルーティは引き続き、口を噤んで。
「ならば此処はどうだろう。怪我をしない、故に死なない……だがそれ故に貴殿も半ば遊びの感覚でいるのではないか?」
ぎくりとした。
「返す言葉もないだろう」
リオンは口端を吊り上げる。
「あの場で我々とフォーエス部隊の意見が割れたのは、その違いがあるからだよ。カービィ殿の意見も最もではあるが……システム障害が見せた光景こそ、戦場本来のものだと思う」
モニター越しに飛び込んだ血の光景がフラッシュバックする。
「我々は少し強くなりすぎたのではないか。故に手を緩めるし、加えて与えられた平和な環境に慣れすぎている」
ルーティは眉を寄せて。
「戦いたくないという本心。それはどうか忘れないでほしい。だが戦場に立った以上は失っていいものなど何処にもないのだよ。例え、このシステムの中でも」