第二章-前編-
声。悲鳴。舞い上がる赤に、目を開く。
「リンク!」
地面に倒れ込んだリンクの傍へ駆け寄って膝をつくトゥーンを目に、遅れてマリオが叫ぶ。活気溢れていた戦場は一変、辺りは騒然とした空気に包まれた。
まだ幼いその目に長く留めてしまうその前に。クッパは目を開いたまま呆然と立ち尽くす息子のジュニアを引っ張り寄せて頭を自身の体に押しつける。ロゼッタも星の子であるチコを優しく胸に抱いていたまま言葉も無く。
……どうして。
今まで、こんなことは――!
「皆さん落ち着いてください」
止血を焦るマリオの後ろに立ってロゼッタが口を開いた。
「まずはこの試合を終了させましょう」
「そ、そうか。ルイージ」
右脇腹から左肩にかけて深く斬られている――
「分かった」
ガノンドロフは地面に仰向けになって痛みに顔を歪め、時折身じろぎながら何とか呼吸を繋ぐリンクを見つめた。庇われたことも気に食わないが、成る程。さすがは勇者の血筋。小僧とて容赦もなかったか。
「兄ちゃんっ……!」
程なくして場の空気に見合わないBGMが途絶え、しんと辺りは静まり返った。
まるで照明がふっと消されたかのように、舞台は暗転。
Bブロック最終戦を飾る第八回戦は。
システム障害による負傷者の発生により無効試合という結果に終わった――