第一章
コツ、コツと靴音が響いている。
……これは彼らの立場上、当然なのだろうが何故遅刻したのか聞かれなくて本当によかった。知らぬ相手と会話が無いというのも何となく落ち着かないが、だからといって話題がそれでは返す言葉もない。
式典の会場は三階にあるらしい。ここだけの話、X部隊リーダーを務めるルーティでさえ三階へ行くのは初めてなのだ。実のところ司令塔の警備は厳しく、本当に限られた人間しか上の階へ上がることを許可されていない。
なら特殊防衛部隊の一員であるルーティ達もその限りではないのでは?
……いいや。X部隊というのは一見特別に見えて他からの扱いは平凡な部隊と大した変わりはないのだ。雑用に似た依頼を向けられるのもそれが理由。木を隠すなら森の中といったように特殊だからと特別目立つような扱いはせず、他と変わらぬ平凡な部隊だと世間を上手く化かし警戒を解いているのだ。
とはいえ、今は度重なる活躍によって名を上げている。変わらないのは、司令塔内部での扱いだけ。何とも不便なものが後に残されたものである。
「……というのが、……で」
声が聞こえる。会場が近いのだろう。
「何故なら……」
次第にはっきりと。
「……この命に換えても使命を全うする」
ベタだなぁと思いつつ。
案内係の男が両開きの扉を手のひらで指し示した。その際の一礼を思わず返して。
「それが」
なるべく音を立てないようにしながら。
「第四正義部隊『フォーエス部隊』なのです――」
……扉を開く。