最終章
……そんな顔をしなくたって。
忘れるわけないでしょう。この十年間、ただの一度も忘れなかった。
これから先も、ずっと。
「ユウ?」
遠ざかる戦友の背中をぼうっと見つめるその人に不思議そうに。
「どうしたの?」
「……いや」
素っ気なく返す彼に、ははぁん、と。
「もしかして貴方寂しいのね?」
「そんなわけがあるか」
ふんと鼻を鳴らしたが即座に否定したのが余計に怪しい。
「素直じゃないんだから」
「違うと言っている」
今度は顔を背けた。
部分部分が分かりやすい人だ。リムはふふっと笑みをこぼす。
「人をからかうのも大概に」
「……私ね」
並んで歩きながら。
「貴方のそういうところ、好きよ」
優しい風が吹いていく。
「昔から。何も変わってなくて」
ユウは何処か安堵したように小さく息を吐く。
「お前が気付いていないだけだ」
「ずっと一緒に居るものね」
そう言って笑う、彼女の横顔は事実寂しげで。
「何処か遠く感じたあの人たちも、一緒に居れば違ったのかなって」
儚げで。
「また会いたいなぁ」