最終章



……そんな顔をしなくたって。

忘れるわけないでしょう。この十年間、ただの一度も忘れなかった。


これから先も、ずっと。


「ユウ?」

遠ざかる戦友の背中をぼうっと見つめるその人に不思議そうに。

「どうしたの?」
「……いや」

素っ気なく返す彼に、ははぁん、と。

「もしかして貴方寂しいのね?」
「そんなわけがあるか」

ふんと鼻を鳴らしたが即座に否定したのが余計に怪しい。

「素直じゃないんだから」
「違うと言っている」

今度は顔を背けた。

部分部分が分かりやすい人だ。リムはふふっと笑みをこぼす。

「人をからかうのも大概に」
「……私ね」

並んで歩きながら。

「貴方のそういうところ、好きよ」


優しい風が吹いていく。


「昔から。何も変わってなくて」

ユウは何処か安堵したように小さく息を吐く。

「お前が気付いていないだけだ」
「ずっと一緒に居るものね」

そう言って笑う、彼女の横顔は事実寂しげで。

「何処か遠く感じたあの人たちも、一緒に居れば違ったのかなって」

儚げで。

「また会いたいなぁ」
 
 
22/37ページ
スキ