第二章
そんなこと、聞かされたこともなければ、知っているはずもなかった。
「……ぁ」
どくん、と心臓が大きく鼓動する。
「兄さんが、辛い思いをしながらも必死で戦ってきたこと、知ってる……」
ルイージはあはは、と苦笑して。
「本当、僕が兄さんと背中合わせで戦えるほど強ければ、申し分ないんだけど」
知らないわけだよ。
戦いの先にある勝利しか見えていない馬鹿な俺が、傍にいたい一心で戦ってきた弟の存在に気付けるはずがなかったんだ。
それなのに、お前は。
「……頑張ってね、兄さん」
こんな俺を、“兄さん”って呼ぶんだな。
「ははっ……」
帽子の鍔をきゅっと掴んで下ろし、顔を隠す。マリオは暫し、沈黙して。