第十一章-後編-
クレイジー、とマスターが囁いた。小さく息を吐き出す。
「後悔するからね」
ゆっくりと。
「まさか」
けれど確実に。
「もう、充分だよ」
その手は彼の元へ。
「ひとつだけ」
ラディスはまだ幼いその二つの手を握って言った。
「もっと早く助けたかった」
そうすれば。
こんなに憎んだりすることもなかったのに――
「馬鹿なヤツ」
クレイジーはラディスの手を自身の額に寄せて。
「……たくさんの物語を見ておいで」
弱々しく笑うのをマスターは釣られて微笑を浮かべた。
「でも残念だな」
ラディスは目を丸くする。
「本当は」
雫。
「お前とも一緒に見てみたかったんだよ。……ラディス」