第十一章-後編-
胸を突く。
「クレイジー」
その人は笑った。
「世界は……君が思うより酷くないよ」
「……嘘だ」
「面倒見が良くて優しい兄と、感情豊かでお兄さん想いの弟」
目を開く。
「君たちが教えてくれた。本当の自分だ」
ああ。
「だから分かる」
この人は、本当に。
「君たちに造られた“この世界”が――醜くあるはずがない」
――本物の。
「クレイジー」
だからこの人なんだ。
「なんだよそれ」
……だから、殺さなかったんだ。
「酷いことするよ」
「うん」
「意地悪も悪戯もたくさん」
その人はまた笑った。
「大丈夫だよ」
優しく。
「……それをさせないのが俺たちだから」