第十一章-後編-



傷付け、拒むものに抗いながら。


この手を掴んだら?


「……い」

クレイジーは庇うようにマスターを抱き締めて叫んだ。

「嫌だッ!」

ラディスは眉を顰める。

「っ……時間が、無いんだ……早く……!」
「兄さんは……兄さんは渡さない」
「そうじゃないんだクレイジー」
「黙れッ!」

クレイジーは更に強くマスターを抱き締めた。

「世界は……“この世界”は僕たちを愛してくれなかった! そんな世界で! 僕も兄さんも幸せになれるはずないっ!」


気の遠くなるほど昔から、ずっと。

夢見て、それでも。


――幸せになりたかっただけなのに。


「なれる!」

ラディスは叫んだ。

「嬉しいことも悲しいことも。沢山のことを教えてくれた」
「うるさいッ」
「俺たちを愛してくれた」
「黙れ黙れ黙れッ! そんなの僕たちは知らない!」

手を伸ばす。

「――今から知るんだ!」
 
 
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