第十一章-後編-



クレイジーはくっと奥歯を噛み締め、左腕を払った。もっと速く、もっと激しく。赤黒く濁った瞳が更に黒く沈んで命令を下す。従って強風が、その風に跨ってエネルギーが吹き荒れた。金色の電光を纏い立ち向かうラディスの頬を跳ね――手足を切ってその行く手を必死に阻む。だけど。

「……なんで」


それでも、ラディスは。


「なんでだよ! どうしてだよ!」

クレイジーもいい加減に攻撃の手が緩まった。

「だって、おかしいだろ! なんで僕たちなんかの為に」
「――大丈夫」

ラディスははあっと息を吐き出して答えた。


「“なんか”じゃない」


咳き込む。

「ッか」

血がこぼれて。


「おおぉおおぉおおお……ッ!」


劈く声と同時にこめかみや足首をエネルギーが裂いて、けれど最後突き出した棘を踏み越えると後はもう目と鼻の先だった。ラディスは手を伸ばす。

「……マスター! クレイジー!」

息を吸い込んだが絶え絶えに。

「手を……!」 
 
 
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