第十一章-後編-
その時だった。
「おおぉおおぉおおおッ!」
渦巻く黒を突き破り、気迫のこもった声を連れて現れたのは。
金色の光をまとったボロボロの戦士――
「あいつッ」
ラディスの姿をその目にするや否やクレイジーは目の色を変えた。
「来るなああぁあああッ!」
距離が縮まることを許さんとするようにラディスの足下から次々と、暗い紫色の棘が突き出て襲いかかる。けれど捕らえることは出来なかった。あの速さの前では何も追いつけない。クレイジーはきっと睨んで隻眼を赤黒く濁らせる。
「……お前なんかに」
拒絶する。
「兄さんは渡さないッ!」
――元より強かった風が、更に唸りを上げて吹いた。吹き飛ばそうというのだ。
あの時、足を取られた風と同じ。
でも。
今度こそ伝えるんだ!
「マスター聞かせろ!」
ラディスは駆けながら叫ぶ。
「お前の本音をッ!」