第十一章-後編-



心臓の音が聞こえる。

何となく、ぼうっとしていた。虚空を見つめて、何を思うでもなく。


この音が止んだら。


「ねえ、兄さん」

弟は愛おしそうに兄の頬を撫でる。

「分かる?……もうすぐだよ。もうすぐ、ひとつになれる」

虚ろ目で恍惚と見つめて。

「もっと喜んで。御祝いをしよう」

嬉々とした声は何処か何かが欠けている。

「もうすぐ迎える僕たちの世界は」

……壊れている。

「“この世界”よりずっと――」
 
 
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