第二章



「兄さん!」

その一声で、マリオは足を止めた。

「……聞こえたか?」

ゆっくりと顔を上げる。当然のことながら本人の姿は見えなかったが、確かめるようにマリオはその名を口にした。

「ルイージ……?」


バトルルームのシステムを管理する機械の前には、マスターの代わりにルイージが立っていた。機械に備え付けられたマイクに向かって叫んだのは、彼だったのだ。

「何だぁ? 試合の最中」
「しっ」

文句を言いたげなファルコを窘めたのはフォックスで。口を閉じ、行く末を見守る。

「……あ、」

思うように声が出ない。

顔を上げた辺り、此方の声が聞こえているのは確かだ。でも、そうじゃなくて。


この声さえも負担になってしまったら――
 
 
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