第十一章-後編-



――ただの揺れじゃない。レイアーゼ全域が震えているのだ。

恐らく中で奴らの準備が整いつつあるのだろう。この揺れは謂わば警告。もうどうにもならないぞと嘲笑っているのだ。……調子に乗りやがって。創造に破壊に好き放題、いくら神様だからって。一度生まれたからにゃ意思があるってもんだ。

させはしねえぞ、クソ餓鬼ども!

「クレシス!」

奥歯を噛み締め要塞を睨んでいたその時だった。

「なっ」

狐だけなら未だしも。――なんでラディスまで来ていやがる!

「下がってろっつったろ!」

ぴしゃりと。一瞬たじろいだが、退かず。

「聞いてくれクレシス」

顔を顰めて舌打ち。

「時間が無いのは分かってる。でも、お前一人じゃ無理だ!」
「だからってそいつを連れていって何になる」
「ラディスにならあいつらを止められる!」
「くどい! もう何度目だ、説教なんざしている暇はねえんだよ!」


地面が揺れる。


「だからってお前一人を行かせられない」
「じゃあ誰の犠牲なら納得がいく?」

フォックスは眉を顰める。

「どの道、時間もそう残されていない。……誰かが行かなきゃ、どうせ死ぬんだ。それで死ななきゃ運が良かった、それだけの話だろ!」
「……いいや」

ラディスはぽつりと。

「此処にいる誰も」

口を開く。

「……死なせはしないよ、クレシス」
 
 
21/40ページ
スキ