第二章
そんな僕が、一体何をしてやれる?
システムをダウンさせれば、試合を強制終了させることが出来るだろう。そうすれば、兄さんは。……違う。考えるんだ。
どうすればいい――?
「もう、ラディス! そこは潜るの!」
「自重を知らないな。リムは」
どうして、彼らはあんなにも楽しそうに観戦していられるのだろう。ルイージは暫しその後ろ姿を遠目に眺めていて。
――変えられるのは。
はっとした。一度、モニター画面を見つめた後で、その視線を機械を操作しているマスターへと移す。……伝えなくちゃ。
突発的にそう思った。
自分が本当に求めていたものは、何だっただろう。それは他でもなく、たった一人の兄である彼の笑顔だったのではないか。
この声を、届けられるのは今だ。
「マスター、ちょっとごめん」
皆が息を呑んで見守る中、試合は間もなく終盤に差し掛かろうとしていた――