第一章



「くっ」

怯んでいる場合じゃない。

すぐにスイッチを押し直してマニュアルモードに切り替え、ハンドルを握る。

ゆっくりと速度を落とし、何とか機体が安定すればほっと一息。青年はウィングにしがみついている男を睨み付けて。

「危ないじゃないか! って」

青年は目を丸くした。のっそりと顔を上げたその男は、先程、川で溺れていた子供を助けていたラディスだったのである。

「はあ、びっくりした……」

ラディスはウィングの縁に腰を下ろすと、

「……えっ」

その光景に目を開いて。

――晴れ渡った青の世界が何処までも続いていて、視線を落とせば故郷であるメヌエルの森や、美しい海が広がっている。

「ぁ」

と、小さく声を洩らした。

固まってしまっているラディスを見て、青年は恐怖のあまり硬直してしまったものだと思い込んだのだろう。何せこの高さだ。
 
 
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