第十一章-中編-
「ユウ」
呼ぶと彼はようやく気付いたようだった。
「なんや気になることあるんやったら」
「問題ない」
言い切られたその時だった。
巨人が吠え声を上げて体を大きく捻ったのだ。マリオとルイージは捕まったまま解放されていない。あの状態で好き勝手に振り回されたら、地面に叩きつけられたら無事では済まされない――きっと顔つきを変えてピーチが自ら飛び出した。
「いけないっ、」
魔法の解除されたシークが無防備に落下する最中、空中で入れ違うピーチへ咄嗟に手を伸ばしたが届かない。
「ピーチ!」
――その叫び声は空を劈く吠え声に掻き消された。
「あぐっ」
巨人は両腕を右から左へ大きく振り回した。多量の砂煙を巻き上げながら巨体ごと回転させて、そして不意に。
手の中に捕まえて逃がさなかったそれを、手放す。
――野球選手の投げる剛速球のように解放されたマリオとルイージの体はその先の建物の壁を当たり前のように突き抜けて真っ直ぐ瓦礫の山に激突した。
ピーチは空中で留まって振り返る。