第十一章-中編-
「構うなッ!」
踏み出そうとしたマルスに気付いてマリオが声を絞り出した。
「っが……いいから……早く……ぅぐ……」
ぎしぎしと悲鳴を上げる体を巨人は容赦なく握り締める。見せつけるように、高く掲げられた二人の体はもう間もなく、ぶちっと耳障りな音を立てて多量の血を飛び散らせながら最悪の結末を――そんな予感が頭から離れなかった。
いや。まさに今、その予感が現実となり降りかかろうとしているのだ。
「マルス!」
「救出が先だ!」
飛び出そうとするマルスを腕を掴み制止させるロイの脇を。
二つの影が抜ける。
「いいから進みなさい!」
その後方からピーチが叫ぶ。
――地面を蹴り空中に飛び出した影の正体はサムスともう一人。スカーフ状の長い布を髪と右目を残して巻いた細身の青年。ゼルダの偽りの姿、シークだった。
ピーチが両手を組んで瞼を下ろし祈りを込めるとシークとサムスの体の表面にほんのりと桃色の光が宿った。飛翔の加護を受けながらサムスは空中で銃を、シークは針を構える。狙うは巨人の手の甲、解放を図るため。
「進みなさい!」