第十一章-中編-



二人の影が近付くに連れてマルスは走る速度を緩め、立ち止まった。

そして、振り返る。


――本当に敵意があるのなら狂ったように腕を振り回していればいい。

隠し球を惜しまず繰り出せばいくら此方が頭を働かせたところでその巨体の前ではただの虫けらも同然、相手にならないはず。それなのにどうしてまた最初みたいに尾を引いて唸るそれだけなのか……意図が読めない。

まあ、奴が普通の人間と等しく物を考えて行動するようには窺えない。魔物の類というのは結局のところ総じて馬鹿なんだ。マルスは心の中で思ってひと睨み。


「聞こえるかい」


――無線を通して聞こえてきたのはラディスの声だった。

「状況は把握してるだろうが、まずは全員の安否を確認したい」

その頃にはマルスも合流したロイとカービィと二言三言交わした後で、後は無線に耳を傾けていた。

「……全員無事か?」

ラディスは発言する度に間を置いている。

言葉で焦らせたくないのだろう。何せこの状況だ。

「そのままで聞いてほしい」

誰も口を挟まなかった。

「俺たちはこれから強襲作戦に入る」
 
 
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