第十一章-中編-



思い浮かぶ。沢山の日々が。

それを振り切るように。

「……分かった」

声を絞り出す。

「マルス」

銀の光沢が駆けた。


「彼らを殺してくれ」


それが答えだったんだ。

初めから共存なんて出来なかった。有り得なかった。


救いなんて、なかったんだ。


ラディスは気付かぬ内に瞼を下ろし、その光景から目を背けていた。

誰もそれを咎めなかった。見逃してくれたのだろう。

「……マルス?」

改めて瞼を開いたのは無線に誰かの声が届いた時である。
 
 
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