第十章-後編-
「――兄さんの邪魔をしないで」
そんな声が聞こえたが刹那。
「ッが!」
目の前に現れたクレイジーの回し蹴りが脇腹にクリーンヒット。
そのまま叩き落とされ地面に真っ逆さま。幸いなことに意識が途切れることなくラディスは地面に到達するよりも先、空中で後転し体勢を整えて地面に着地、少し足の裏を摩りながら後方へ滑ったが何とか踏み留まり跪いた。
「っ……君もしつこいね」
「それはこっちの台詞」
クレイジーは幾らか離れた位置に降り立つ。
「どうして邪魔をするの? 僕たちのことが嫌いなの?」
そう問うが可愛い質問でもない。真面目に向き合って説得するのは危険だ。
何せあの目、今更何を言ったところで許すつもりはないようだ。ラディスはくっと眉を顰めて右手を突き出し雷撃を放った。クレイジーの瞳はそれが到達するよりも先赤く瞬いて赤い閃光を走らせ、見えない攻撃により相殺。
その隙、ラディスは後方に飛び退いて地面を蹴り、残る鏡を破壊するべく檻の反対側へ跳んだ。もう一度地面を踏み、跳び上がって――
「っ、」
声が詰まった。
次に目の前に現れたのはマスターだったのだ。