第十章-後編-
次の瞬間。
「なっ」
目に留めていたダークリンクの体が黒い煙と化し、消えてしまったのである。
そんなはずはない、気配も何も確かにあいつだったのに。急な展開にクレイジーは焦りを募らせて辺りを見回し、姿を探す。
その焦りが魔物の接近を許していた。
飛びかかる数匹をクレイジーは鬱陶しいとばかりに眉を顰めて左腕を打ち払い、中心から波紋のように発した衝撃波によって弾き飛ばす。が、入れ替わるようにして踏み込んだ影がまたひとつ。剣を腰に据えてにやりと笑みを浮かべる。
――ダークリンク!
ぎりぎりまで寄せた剣の突き出しを躱して左手を翳す。直後手のひらから放たれた赤い光の玉がダークリンクの体を背中から貫き風穴を開けた。……が。
またもそれは黒い煙と化して消えてしまったのだ。
「くくっ」
不快な含み笑いに振り返ると同時。クレイジーはすかさず構えて剣を受け止める。
「感謝してるぜぇ? てめえのお兄様にはよぉ」
顔を顰めるクレイジーに構わず剣を一度引いて薙ぎ払い。クレイジーはそれを飛び退くと同時に空中で後転、躱したがダークリンクはすかさず接近。続け様、突きを仕掛けるダークリンクを躱して背後に回り込み、左手を払い光の刃を横に連ならせ放ったが背中に命中、と同時またも姿を掻き消して。