第十章-後編-
……あの馬鹿。
「余所見してていいのかなあ」
一瞬の油断が命取り。
未だぎりぎりと押し合うクレイジーの後方、空中に幾つもの赤い光の魔法陣が浮かび上がり危険を察知したダークリンクは瞬時に飛び退いた。直後、その魔法陣から先が鋭く尖った結晶が降り注ぎ、着地したダークリンクは顰め面で剣を振るって。
「次は教えてあげないよ?」
クレイジーは人差し指を唇に当てて愛らしく。
「くくっ」
にやりと口元に笑み。
「……餓鬼が。あまり大人をからかうなよ」
ダークリンクはその切っ先をおもむろに差し向ける。
「泣き目を見るぜぇ?」
次の瞬間だった。
ダークリンクの足下の影が中心から丸く円を描くように伸びて、そこからボコブリンやリザルフォスといった魔物を召喚したのだ。続けて崩れかかった建物や瓦礫の後ろからは翼を持ったカーゴロックや、ウルフォスといった魔物まで大小様々。
「……ふぅん」
クレイジーは浮かべていた笑みをすっと消して。
「真っ向勝負かと思ったのに。案外大人気ないんだね」
左腕を横に突き出す。
「ま、いいけど」
クレイジーの背後に浮かび上がる巨大な魔法陣。
「泣き目を見るのはそっちだよ」