第十章-後編-
ゆっくりと振り返るのと同時、空から降り立つ男が一人。
ラディスは息を呑んだ。
「あまり遊んでやるなよクレイジー」
「分かってる。焦らすのは得意じゃないんだ」
クレイジーは肩を竦めて愛らしくにこり。
「すぐに終わらせてあげるね?」
舌打ちをこぼしてダークリンクは剣を逆手に持って突き立てる。刹那突き立てた箇所から黒い煙が漏れ始め、引き抜くと同時に噴き出したそれは黒い剣を一瞬にして象った。戸惑うラディスにダークリンクは叫ぶ。
「さっさと剣(そいつ)を抜けクソネズミ!」
慌てて剣を引き抜いた、その時。
甲高い金属音が響いてすぐ後ろのダークリンクはクレイジーの拳を剣でぎりぎりと受け止めていた。……剣を素手で!?
見ればクレイジーは左腕全体を半結晶化させている。成る程あれで――
「気ィ取られんな前を向けクズ!」
感心している場合でもないがそれにしたってその言いようは。
なんて突っ込む間もなく足下、両側から黒い柱が飛び出し交差したが刹那、青白い光をぼんやりと灯す槍を象った巨大な結晶を受け止めた。
その先で右手を突き出し翳すのは。
「……やれやれ」
マスターは呆れたように言った。
「お前も懲りないな」
「知ってるだろ」
黒い柱が粒子となり弾けて消滅したのと同時、ラディスは地面を蹴り出す。
「俺は諦めが悪いからな!」