第十章-後編-
数秒の間を空けて、
「くっ」
――大破。
見るも無残に二人が身を潜めていた建物がガラガラと崩れていく中、クレイジーは無傷で立っていた。
不気味に首を傾けて、にたにたと。まさか左手ひとつでこうもおぞましい力を発揮するとは。少しでも遅れていたらと思うとぞっとする。
「……どうしたの?」
クレイジーはかくんと首を反対に傾けて、
「逃げてばっかりじゃつまんないよ?」
どうやら、完全に此方を仕留める気でいるらしい。
ダークリンクとラディスは間一髪、何とか危機を脱していたものの、双方共に策が思い浮かばなかった。一方は負傷ともう一方は力はあれど制限がある。
ちらり、と空を見遣った。
「ああ分かった」
……雲間に光が差してきている。
「鬼ごっこがしたいんだ?」
舌打ちをこぼすダークリンクをラディスは少し後ろから怪訝そうに視線。
「いいよ。僕、得意なんだよね」
ダークリンクは剣を抜いた。
「……下がってろ」
「えっ?」
「勘違いするな」
軽く振るってから尻目にしゃくってみせる。
「てめえの相手はそっちの餓鬼だ」