第十章-後編-
ほんの少しの間を空けて、
「……はぁ?」
ダークリンクは眉を顰めた。
「この期に及んで懲りねえ奴だな」
そしてまた見下す。
「此処に来るまでの間、てめえは何も見てなかったのか?」
沢山の怪我人。命を救えなかった無関係の人々。……目を背けるしかなかった。
それは確かに今回の騒動による犠牲だ。
「分かっているさ」
……でも。
「でも彼らは“そう”じゃない」
ラディスは顔を上げた。
「君じゃない」
その発言に苛立ったのかダークリンクはぎり、と奥歯を噛み締める。
「ここまでくるとただの宗教だな。そんなにオトモダチを庇いてぇのか?」
今度、ラディスは静かに首を横に振って答えた。
「向き合いたいんだ。本当の彼らと」