第十章-後編-
……こんな。
感情的な彼は初めて見る。
「っ、」
直後打ち勝ったかと思いきやマスターとクレイジーの姿はその場から消えて、気配に気付いて見上げれば双方共に空中。刹那それぞれの瞳が赤と青に瞬き、ダークリンクが後方へ大きく飛び退くと同時に降り注ぐ光の刃の雨。
マスターが右腕を薙ぐと、光の刃は後方へ跳ねるようにステップを踏みバク転を駆使して回避するダークリンクを追うようにして地面に突き刺さり、その度大きさを変えて。最後、空中で光の刃が構えた時ダークリンクはラディスの目の前にいた。
「……チッ」
ダークリンクは少しの視線を遣ってばつが悪そうに舌打ちをこぼすと。
「え」
後方に飛び退いてラディスの傍らへ。ひょいと抱きかかえて――飛び退く。
直後に光の刃は先程ラディスが居た場所に深く突き刺さり、大きな音と共に砂埃を舞い上げた。其の間脇に抱えられたラディスはただ目を開くしかなくて。
ダークリンクは無言だった。次から次へと飛んでくる刃を身振り手振りも無しに直前直前で影の盾を生成しながら防ぎ、着地。直ぐ様蹴り出して瓦礫の影、即ち彼ら双子にとっての死角を利用しつつ崩れかかった建物の中へ。
「……逃げたね」
間もなくして攻撃は音と共に止んだ。
「らしいな」
先程の攻防戦により辺りは酷い有り様だ。
「……探してくる」
「クレイジー」
「兄さんは待ってて」