第十章-前編-
鮮血。クレシスは目を細めた。
「何故止める」
――弱い息遣いに。微かながら意志が宿り始める。
「どうでもいいはずじゃなかったのか」
震える手で両刃を掴んで。
「っ……い、」
ぽろぽろと涙をこぼしながら。
「死にたくない……」
なんで。あいつの声が聞こえるの。
じわりと滲む。一人にはしないって言ってくれたのに。
僕、なんて言ったの。
放っておいてよ、なんて。嘘じゃない。
本当は、“行かないで”って叫びたかったのに。
ここで死んだら返せない。
死にたくない。
「死にたくない……!」