第九章
「……、」
ぱたりと本を閉じて。
「いつまで拗ねているんだ?」
――ありがとう。ブルベの気持ちは大事にするから。
「僕だって兄さんとは双子なのに……」
どうやら、返しが気に入らなかったらしい。
だがあの姉妹が納得して手を引いてくれたのは確かだ。このまま二日も三日も同じ話題が続くよりはマシだろ、と言ったところで、こんな調子では。
「兄さん」
「ん?」
「僕ってどう思う?」
ビジュアル的な話だろうか。
「……普通に可愛いんじゃないか」
「なんだよそれ。兄さんはかっこいいのに?」
素直な感想を述べればこれだ。
「002、003」
ロックを解除して開かれた扉から入ってきたのは管理担当の博士だった。
こいつは一年も続いている。その前もそのまた前も自分たちの管理担当に置かれた研究員共は二週間と持たなかった。ま、この頃は弟も落ち着いて無闇に力を使った挙げ句暴走させることが少なくなってきたから単純に運に恵まれただけだろう。
「具合はどうだ?」
「なーんか苛々するー」
博士は疑問符を浮かべて此方へ視線を寄越す。
俺は逸らすように本を開いた。