第九章
「……、」
くだらない。
「えっ?」
目を丸くして弟は振り返る。
「博士も言ってただろ」
俺たちは特別だって。
「優秀な戦闘能力を持つ親からは精子を、特殊能力を持つ親からは卵子を」
「ちょ、あ、兄さんそんな恥ずかしい言葉っ」
もう少し小さな声で話してよ、と弟が慌てて袖を引く。
「……それを掛け合わせて誕生したのが」
「僕たちなんでしょ」
弟はむすっとした顔で解放する。
「だから両親はいない。生まれた時からずっと此処で暮らしてる」
――日出ずる国。とある森の奥深くにひっそり佇む、この研究施設の中で。
「でも僕だって他の子みたいに外で遊んだりしたいよ!」
「たまに外に出してもらえるだろ」
「今日なんか五分もなかったじゃんか!」
後ろで騒ぐのを、先導して歩く研究員の男は気にしない。
興味がないのだろう。
「大体、そんな日常的なものはわざわざ外に出向かなくても手に入る」
弟は表情を沈ませた。少しだけ目を逸らして、答える。
「……僕たちが神様になれば、だろ」