第七章
ぱあっと表情を明るくさせて警戒を解く。
「……ぱぱ!」
それまでメルティの後ろで隠れていたスピカはひと言そう呼んで、とたとたと駆け出した。転けそうになるも、腕を広げて膝を付いていたクレシスの胸の中へ。
「ぱぱだ……ぱぱっ……!」
「ただいま、いい子にしてたか?」
クレシスはスピカを暫く抱き締めていたが、ひょいと抱き上げて。
「……当然だよな!」
くるっとその場で一回転、もう一度強く抱き締める。
「お前は俺の天使ちゃんだ!」
……うわぁ。
「あのクレシスが……笑ってる……」
こんな不気味な光景がこれまであっただろうか。
「うわでも空気めっちゃ重い!」
「他言無用、死人に口無しといった文字が窺えます」
「父親が子供の前で出すオーラじゃないだろ!」
普段から子供の前であんな調子だったのは事実にしても、クレシスとしてはこんな姿を見せたくなかったようで。あはははっ、とはしゃぐスピカと一緒になって笑ってはいるが、子供が悟らない程度に殺人的オーラを発している。
――他の奴に言ったらその時は分かっているよな?
「あう、っあは! ぱぱ、いひひっ!」
頬や首に口付けられてくすぐったそうにスピカが笑う最中。
ラディスとメルティを除いた全員が、クレシスのオーラに戦慄していた。