第七章
や、別にショックとかじゃないけど。
「大丈夫ですか?」
割れたグラスの破片を屈んで拾い集めながら、それでも視線はしっかりラディスの方を向いているフォックスに声をかけたのはリンクである。
「ぜ、全然」
「動揺が見られますね」
ぎくり、肩が跳ねた。
「……処女厨は嫌われますよ」
な、とフォックスは小さく声を洩らして、
「子供が生意気言うんじゃないっ!」
びっくりした。突然声を上げたフォックスにラディスは慌てて声をかける。
「ど、どうしたんだ?」
「へっ? あ、いやっこれはその――」
「フォックスがついていきたいそうですよ」
リンクは子供らしく愛らしく、にこりと笑う。
「どうでしょう」
「……いやいやいや!」
思わず立ち上がり、遅れて否定する。
「俺は別にそんなことっ」
「……ん?」
つんつん、と指でつつかれて。ラディスが振り向くと、そこにはゲムヲが立っていた。既に文字が書かれているメモ帳に、軽く目を通して読み上げる。
「“僕も行ってみたい”……」