第六章



「まさか子供を連れて帰ってくるとは思わなかった……」

ユウは小さく息を吐き出した。

「人聞きの悪いことを言わないでくれ」

ラディスは苦笑いを浮かべて返す。

「……こんなもんか」

シャワーも浴びたし、着替えも終えた。髪は自然に乾くだろうと適当に水滴を拭ったところでラディスはタオルを籠の中に放り込む。

さすがにまだ朝が早いとだけあって脱衣所にはこの三人だけだった。

「子供といえばたまにはルーティの顔も見にいってやれ。任務のついででもいい、帰りに少し覗くだけでも違う。自分の息子だろう」


――先客か。


脱衣所の扉の前で足を止めたのはマスターだった。

あれから一週間だ。恐らく、ラディス達が帰ってきたのだろう。さて、どんな苦情が飛んでくることやら。小さく笑みをこぼして扉を開く。


しかし訪れたのは妙な沈黙だった。


「マスター?」

ラディスは首を傾げて。彼が、珍しく驚いたような顔をしている。

その視線は確かにゲムヲに向けられていたが、すぐにふいと逸らしてマスターは足を進めた。無視をするでもなく彼はゲムヲの元へ向かって。

「……初めまして」

少し身を屈めてそっと頭を撫でる。

「DX部隊管理下兼、屋敷の主をしているマスターだ。よろしく」

その時、マスターを見つめるゲムヲの瞳が一瞬だけ赤く瞬いたのは。

「……うん」


俺の気のせいだっただろうか――?
 
 
 
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