第六章
「おーっし! もうひと息だ、位置につけえーっ!」
監督がメガホンを使って声を張り上げる。
「途中でネタバレ食らわせといて、まだ続けんの? あのジジイ」
「ま、投げ出したところで途中まで撮っといたやつ使うだろうしなあ……」
カービィとマリオは顔を見合わせて。
「やりますか」
「……だな」
俺たちは正義だ。
「はいはーい! 次なにすんのー? 歌うー?」
「おい馬鹿やめろ」
例え誰が必要以上に肯定しようとも、否定しようとも。
「カメラ壊したら弁償なんだけど」
「役者を病院送りにしたらそれこそ裁判沙汰ですよー」
「ちょっとそれどういう意味!?」
変わらぬ想いで、正義を貫く。
「隊長くん」
ふと声をかけられて、同じく位置につこうとしていたラディスは立ち止まって振り返った。思えば、そんな呼び方をされたのは初めてだった気がする。
「もしも全てが演技じゃなかったとして。君はどうしたかね」
ラディスは個々の場面を思い返す。
「……何も変わらなかったと思います」
フレイシー町長は目を丸くして。
「目の前で彼が処分されてしまったとしても?」
ラディスは微笑する。
「戦意喪失とは無縁だと思っていただいて結構です」
――それでも。
「それでも戦うのが、俺たちですから」