第六章
ぴーぶい? プロモーションビデオの略だよな。
「話が掴めないんだが……」
「君たちの事情は十分聞かせてもらったよ」
そこへ現れたのはバーナード氏。未だ警戒の解けない彼に思わず緊張が走ったが、リンクはふっと笑みをこぼして彼の元へ。手のひらで指し示し、口を開いた。
「本名、フレイシー・ベル。ラグナの町の町長を務めている方ですよ」
……暫くは呆気にとられて声も出なかった。
そんなこと簡単に信じられるかと踏み出したマルスも、本人がその証明となる名刺を差し出せば口を閉じて。バーナード改めフレイシー氏はこほんと咳払い。
「騙すような形になってしまい申し訳ない。あれは私の趣味のようなものでね」
「意外なことにフレイシー町長は仮装が趣味でいらっしゃるんです」
にっこりと笑って、リンク。
「……おい」
「任務を言い渡された時からラグナの町についてある程度の情報は得ていました。ネット上には当然画像も転がっているわけですから、依頼人のバーナード氏がフレイシー町長だったということはあの夜鉢合わせした時から薄々と」
「本当にそれだけか? それだけなんだな?」
マリオの強気な態度にリンクは小さく溜め息が洩れる。
「……今回の依頼について」
途端に疑問符が飛び交う。
「まあ、早い話がでたらめです」
「……えっ」
「騙されていた、では聞こえが悪いですが。これは彼の目撃情報を利用した、偽装工作とでも申しましょうか。本来の目的は彼の討伐などではなく、先程話した通り我々ヒーローを注視点に置いたPV撮影。……ですよね? フレイシー町長」