第六章
「しまっ、」
何処かで落としたか、或いは壊れたか。思い当たる節は山ほど、とはいかないまでも幾つかあった。……ああ、この依頼で最も重要なのは。
自分の正体を明かさないことなのに――!
「この町の住人じゃないのか……?」
「あ、はは……ええっと……そ、そうなんですけど……」
ラディスはぱっとゲムヲを引き寄せて。
「ほらこの子! 死神! 処分――ああいや、連れて帰りますんで!」
「ああっ、お前!」
しかし時既に遅し。正体がばれてしまったのはラディスだけではなかった。
「女じゃなかったのか!?」
「うっげえぇ……」
苦そうな顔をして目を逸らすカービィは、どうやら先程の衝撃でスーツの胸元が大きく裂けてしまっていたらしい。これはさすがに言い逃れできないな……
「あ、貴方は……まさか!」
「いやいやいや人違いだと思いますよ!?」
「さすがにもう無理じゃないかな」
びし、と指をさされればマリオは慌てて首を手を横に振って否定したが、その特徴的なヒゲ面で誤魔化しきれるものかとマルスは溜め息を吐いて。
次々と正体がばれていく。五人はいつの間にか一つの場所に集まって背中合わせになっていた。じりじりとドクドクロ達が詰め寄ってくる。最後の最後にして、ヒーロー最大のピンチ。舞台はあそこで幕を下ろしはしなかったのである。
「お前たち、DX部隊だな……?」
「レイアーゼの特殊防衛部隊がどうしてここに」
「まさか今まで化かされていたとはな」
――どうする?
「らです……」
ゲムヲは不思議そうな目で見上げている。
その時、ドクドクロの内の一人が懐に手を突っ込んだのが見えた。ああ、そういえばラグナの町の人間は全員が白魔術師。魔術を発動する際には杖のような棒状のものを用いる者もいる。――もしかしなくても、だ。
違反行為を犯した者に対する……強制処分。
どうする。どうすればいい。どうすれば――!?