第六章
しかし、すぐに異変は起きた。
「……発動しない……?」
本来なら大砲の口から放たれるであろう、火炎が出てこなかったのだ。
いや、考えてもみればあれはヒーローショーでの話。スタッフの人が手伝っているから特殊能力や魔法を使わずに演じれるのであって、実際はそんなことが出来るはずもないのだ。ただ、何故か出来るものだと思い込んでいた。
「おーい。もしもーし」
「さすがに返事はしないでしょう」
軽くノックをして呼びかけるマリオに、呆れたようにリンク。
「これ、本当に大砲? ただの玩具だったんじゃないの?」
「壊れてるって可能性もあるんじゃないかな」
敵のことなどすっかり忘れて大砲に注目する五人。
「……こういうのって確か」
腕を組んで暫く見つめていたラディス。思いきり足を引いて、
「せぇい!」
蹴。
「おまあああっこれ壊れたらどうすんだよおおお!?」
「あ、や、こういうのって大体蹴ったら直るじゃないか……」
「お前は現実を見ろ! 一度漫画やアニメの世界観を忘れろ!」
ガコン、と音を立てて大砲が百八十度、先程蹴られた衝撃で半円を描き、口が後ろを向いてしまった。やれやれ、とリンクは大砲に触れる。
「……?」
大砲の口から、微かだが白い光が洩れている。それは次第に膨張して。
「こいつ動きますよ!」
えっ。
「発動します!」
「ちょっと待てえええっ!?」