第六章
握っていた拳が、ふと緩んだ。
次に顔を上げたラディスの表情は、穏やかで。
「違うよ」
落ち着いていて。
「それは正義ではない」
一瞬驚いたような顔をしてみせたクロガネも、それを聞くと笑い飛ばした。
「あっはっは! やはりな。少しでも意見が食い違えば否定して、己の正義を押し付ける……お前たちの悪い癖だ。そうまでして自分が正しいと言い張りたいか?」
「少し違うかな」
クロガネ、含めドクドクロ達は怪訝そうに見守る。
「正義を名乗るということは決して、偉くなるということではないよ。況してや、その正義を武器に振りかざしてはいけない」
他の四人は黙っていた。
「勘違いしてはいけないよ。ここは戦場であって遊び場とは違う。それでも尚振りかざしたそれを玩具のように振り回し弄ぶというのなら、君たちは正義ではない」
必要以上の肯定も、否定もしない。
「子供だということだ」
言葉こそ不要だった。
ただ単純に、彼を信じていたから。
「……ふ。ならば見せてみろ」
クロガネは不適に笑った。
「本当の正義とやらを!」