第六章
カービィは構えた。
「いくよ!」
ぱちんと指を鳴らすと、それを合図に何処からか放物線を描きながら柄が桃色で赤いリボンを巻いた可愛らしいマイクが飛んできて、カービィの頭に衝突。あだっ、と声を上げたがマイクが落ちる前に手に取り、すうっと息を吸い込む。
「僕の歌を聞けええっ!」
ラディス含め、四人。ヘッドフォンを押さえ込んで耳栓。
「真っ赤なちぃかああいぃいいいい!」
音痴。
「ぎゃあああっ!」
「耳がぁ、耳がぁああ!」
次々と目を回して倒れていくドクドクロに、カービィは息を吐き出す。
「ちょー失礼なんですけどっ」
今のはコスモピンクの必殺技、ボイスシャワーである。設定としては眠らせたり、操って同士討ちを狙うものなのだろうが……さすがは音痴といったところか。
「終わったのか?」
「アンコールなら喜んでお受けするけど?」
「え、遠慮しとくよ……」
シャレにならない。ラディスは苦笑い。
「それにしても分かりませんね。彼らが何故、我々の邪魔をするのか」
「俺たちがヒーローであっちが悪役なら当然じゃないのか?」
「そりゃそうだけどな」
疑問符を浮かべるラディスにマリオは小さく溜め息。
「……そいつはあくまでショーでの話だ。それがわざわざこんな何もない廃墟の町に出てきてまで、俺たちの邪魔をしようって意味が分からねえ」
リンクはぴくぴくと震えて再起不能のドクドクロを見つめ、呟く。
「まるでエンターテイメントですね」