第六章
「ね、ね」
後はどうやって彼の無実を証明するか。そう思っていたその時、くいくいと裾を指で摘まんでは繰り返し引かれて、ラディスは首を傾げる。
「うん?」
「You are hero?」
なんでいきなり英語なんだろう。
でも、そうか。彼の中で自分はヒーローショーでご活躍中、スペシャル戦隊バトレンジャー所属のボルトイエローなんだ。それでも一応、本名は教えてあるが。
「……天空大都市レイアーゼが指揮する特殊防衛部隊」
ラディスはふと立ち上がると、かつて窓があったであろう穴から空を見つめた。
「DX部隊。俺はそこに所属する戦士であり、統率するリーダーなんだ」
なんて自分で言うのはまだ少しむず痒いものがあるな……
恐らく彼には話の大半が通じてないだろう。それでも振り向いて照れ臭そうに笑う、その表情で分かるのだ。この人は、きっと物凄いヒーローなんだって。
「……えーと」
きらきらとした眼差しを受けてしまえば彼の心情は手に取るように分かった。
「かっこいい……正義……!」
ゲーム&ウォッチは立ち上がると、ゲーム機を胸に駆け寄って。
「なる。したい。でらっくすの……」
「は、入りたいのか? DX部隊に?」
うんと頷く彼を見てラディスは思いつく。
――そうだ。現時点では死神という認識でしかない彼を更生させるという意味合いでDX部隊に引き入れる、というのはどうだろう。
言葉が通じるというのはマルスも知っていることだし、悪意を感じられないことだって。それにこれは少々無理矢理ではあるが、リーダーである自分なら彼を部隊に引き入れるだけの権利がある。
「……、」
時間をかければ彼の無実だって証明することができるだろう。しかしここはこれまで彼が愛してきた場所。簡単に引き離してしまって、いいのだろうか。