第六章
今日は色々と動き回ったお陰で疲れていたのだろう、十時を過ぎる頃には全員が眠っていた。マリオとカービィはテレビを眺めている途中で睡魔にやられたのか、ソファーに座ったまま寝ていた。珍しい組み合わせだ。
そんな中で、ラディスはぱちっと目を覚ます。実は、彼はずっと寝たふりをしていたのだ。皆が寝静まったところを見計らって――ある場所へ、向かう為に。
あの衣装を着ていくつもりはない。
私服は持ってきているのだ。屋敷から此方へと移動する際に着ていた服と、その逆で此方から屋敷へと帰る際に着る予定の服。まさかこんなタイミングで使うことになろうとは思ってもみなかっただろうが、自分の性格、行動パターンを冷静に考えてみると。……まあ、遅かれ早かれやっぱりこうなるんだな。と納得。
寝ている彼らを起こさないように。
そっと、そーっと。抜き足、差し足……何だっけ。まあいいか。
「ッ!?」
大きい何かに躓いたが、セーフ。恐る恐ると振り返る。
マルスだった。……マルス!? あ、ベッドにもソファーにもいないと思ったらこんな所で寝ていたのか。王子様だからふっかふかの高級なベッドじゃないと寝れないんじゃないか、なんて思っていたのにまさか床の上で寝ていらしたとは。
「すー……」
外、そんなに寒くないよな。ベッドの布団はこれは渡してなるものかとばかりにリンクが手繰りよせて足に挟んでるし、無理矢理剥ぎ取ったら起きてしまう。
ラディスは着ていたジャケットを脱ぐと、マルスの肩からそっと掛けて。再び、抜き足差し足……そうだ思い出した忍び足で扉へ向かう。ここまで来ればもう安心。スリッパを脱いでから靴を履いて、音を立てないように部屋を後にする。
大丈夫! カードキーは持ったし、用は済んだのに扉にロックが掛かってて入れないから泣く泣く中の誰かを起こす羽目に、なんてことはないさ!
いやー自分にしては冴えてるなぁ! ハハッ! ホテルの裏口は何処だろう!