第六章



「……それにしても」

マルスは小さく溜め息を吐き出す。

「もっと他に方法があったんじゃないかな」

何が言いたいのかは分かる。未だこのやり方に納得がいかないのだろう。

「まー、言われてみれば変な役ばっかだしねぇ」

カービィの役はコスモピンク。唯一の女性で、あらゆる敵を色気仕掛けで翻弄するお姉さまキャラである。彼が男という時点で役は合っていないのだが、それに加えて孤高の歌姫という設定まで存在する。……残念なことに、彼は音痴なのだ。

「そういう問題じゃないだろ!」

マルスの役はナイトブルー。普段はクールを気取ってつんとお澄まし、かと思いきや厨二病の設定である。口を開けばこっちが耳を塞ぎたくなるような訳の分からない言葉の数々、台詞は基本的短いのに難しい漢字が使われていたりとややこしい。

「諦めろって。嫌ならさっさと任務達成するしかねえんだし」

マリオの役はファイアレッド。某ゲームとは関係ない。兎にも角にもよくある戦隊のリーダーである。実は、組と名のつく集団の長の息子で気性が荒い。ツッコミ役ではあるものの、用いるのはハリセンではなくバットと非常に危険なキャラ。

「女の子、いるといいなぁ……」

ラディスの役はボルトイエロー。普段は引っ込み思案で戦闘も嫌々参加するような、ヒーローとはあまり言い難いキャラである。性格も非常にネガティブで、戦う前から諦めることもしばしば。一応、ムードメーカーの枠なのだろうが、はて。

「いいじゃないですか。俺は楽しいですよ?」

リンクの役はフォースグリーン。最年少の礼儀正しい敬語キャラ。いいとこ取りのお坊っちゃんで、頭脳明晰。欠点といえば素直すぎる性格が災いして騙されやすいところか。罠にはめられることも多々あるが、それを脱け出すのは早い。

と、こんな具合にキャラが物凄く作り込まれているのだ。たかがヒーローショーだというのに、監督の物好きときたら。演じる側もひと苦労である。

「く……こうなったら権力と財力であの町を手に入れ、方針を変えて……」
「いや駄目だろ」
「ヒーローが闇堕ちというのもなかなか面白そうですねぇ」
「子供が泣くんじゃないかな」
「いなかったらどうしよう……!」
 
 
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