第六章



ラディスは昼食を口にしながら、ふと口を開いた。

「カービィ、あれはやらないのか?」
「んー? はふぇ?」
「意地汚いな。ちゃんと食べてから喋りなよ」

マルスが横目で促すと、カービィは口からはみ出ていたエビフライの尻尾をそのまま飲み込んだ。普通は食べないので誰も吐き出すものなのだが。

「えっ」
「漫画やアニメでよくあるじゃないか」

ラディスは箸の先で己の弁当箱をさして、にこり。

「……自分で言う? てーか梅干ししか残ってないし」
「嫌いなものだけ残したってそう上手くはいきませんよ」
「べ、別に。好きじゃないだけだ」

そう言って箸で摘まんだ梅干しを口に含んだ、その時。

「ドリンクの方は宜しかったですかー?」
「ぶふっ!」

何の前触れもなくスタッフの男がひょいとテントに顔を覗かせれば、四人は一斉にヘッドフォンを装着した。が、一人肩を跳ねさせて反応の遅れたラディスを、隣に座っていたマリオがすかさず後頭部に手を回し、テーブルに向かって張り倒す。

「な、ななな何か……?」
「いやスポーツドリンクが口に合わなければと思いまして」

ちょっと買ってこようかと、と続けながら男が覗き込もうとすれば、さっとリンクがその視線の行く先を阻んだ。あはは、とぎこちなく笑み。

「……何してるんですか?」
「いやぁこいつ急に眠っちゃって! 午後の部まで起こすなって!」

苦しい。

「そ、そうなんですか」
「だから全然気にしなくていいですよー?」
「このスポーツドリンクも美味しくて何本でも飲めちゃい……うっぷ」
「本当にお気遣いなく!」

にこにこと笑いながらリンク、用意されていたスポーツドリンクをわざわざ二本も飲み干してからカービィ、そしてマルスが続ければスタッフの男は疑問符を纏わせながらようやくテントから出ていった。はあ、と盛大な溜め息。
 
 
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