第六章



「なんで僕がこんなこと……」
「まーた言ってる。そんなに王子様って偉いわけ?」
「違わないけどそうじゃない。くだらないって言いたいんだ」

マルスは小さく息を吐き出してカービィをひと睨み。

「君の役はいいよね。お似合いじゃないか」
「勘弁してよ。女装自体は問題ないんだけど成り切れってのは別」

そういえばカービィの役は女性なのである。

「大体さぁ……“魅惑のダイナマイトボディ! 色気仕掛けで悪の集団を翻弄する孤高の歌姫!”なんて設定になってるけど違うからね? ぺったんこだし」
「そもそも君は色気より食い気だし、何より音痴じゃないか」

カービィ、きっと睨みつけて。

「何か言った……?」
「まさか自覚がないとか言わないよね」
「あの時は風呂場だったから余計に響いただけで」
「お望みならボイストレーニングの特別講師をお呼びしますが?」
「結構です!」

睨み合う二人は差し置いて、ラディスは用意されていた弁当に瞳を輝かせる。

「これ、バラエティ番組とかでよく見かけるあれだよな!」
「……ロケ弁?」

ラディスは楽しそうにこくこくと頷いて。

「そりゃ楽しそうで何より」
「楽しいに決まってるじゃないか!」

ばん、とテーブルを叩いて立ち上がり、ぐっと拳を握る。

「ヒーローといえば子供たちの憧れ! それを自分が演じることになるなんて……っそれにこの扱い! まるで有名人じゃないか!」

……幸せそうである。

「自分の父親がヒーローなんて知ったら喜ぶだろうなぁ……」
「普段からDX部隊って戦士やってるし、そこそこ有名なんだがな」
「そこは突っ込まないであげましょう」
 
 
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