第五章
彼らはそれからどうなったのかって?
まさか、前回のお姫様と同じく国に帰ったりなんてことはないさ。その代わり、マルスの連れとして宿泊していたロイのDX部隊正式入隊が決まったくらいで。
日常にこれといった変化なんて、
「一体いつまでおねんねすれば気が済むのかなぁ?」
変化、なんて……
「さっさと起床!」
「わああっ、それ、それだけはああ!」
――あれから嫌がらせこそ仕掛けてこないものの、マルスのラディスに対する態度は厳しかった。何でも、「僕の上に立って指揮する人間がこれじゃたまらない」とか。まあ一概には厳しいといっても程度はあるようで。
「……もう。髪乾かさないで寝たでしょ。ぼさぼさじゃないか、全く」
「こうして見るとラディスの子供みたいだなー」
マルスは途端に顔を赤くして。
「ロイ……怒るよ……?」
「たたたっ、タンマ! 落ち着けって剣しまえ!」
見方を変えれば、それも彼なりの愛である。
「はい終わり」
マルスはくるっと櫛(くし)を回してひと息。
「おおっ……」
「じゃないでしょ。朝食が終わったら次は依頼の整理。それから」
「わ、分かった! 分かったから!」
まるで逃げるようにして洗面所から飛び出していくラディスに、マルスはやれやれと溜め息。その隣でロイはくすくすと笑って。